相続した実家が空き家のままになっている、という方は少なくありません。総務省統計局の調査によれば、全国の空き家は令和5年時点で900万戸、空き家率は13.8%と過去最高を更新しました(詳しくは後述します)。空き家をそのまま放置すると、固定資産税の負担や近隣トラブルのリスクが続くため、「売却」を考える方も多いのではないでしょうか。
そうしたときに知っておきたいのが、相続した空き家を売却した際に使える「3,000万円特別控除」です。この制度には適用期限があり、令和9年12月31日までに売却することが条件のひとつになっています。この記事では、税理士の視点から制度の仕組みと適用要件、期限が近づく中で今のうちに確認しておきたいポイントを分かりやすく解説します。
空き家が増え続ける背景―全国で900万戸、空き家率は過去最高
総務省統計局が公表した「令和5年住宅・土地統計調査」の速報値によると、全国の空き家数は900万戸で、前回調査(平成30年)の849万戸から51万戸増加しました。総住宅数に対する空き家率は13.8%となり、平成30年の13.6%から上昇し、過去最高を更新しています。

相続で実家を引き継いだものの、住む予定がなく売却も進んでいない、という餬ースが空き家増加の一因とされています。こうした背景から、国は相続した空き家の売却を後押しするため、「相続空き家の3,000万円特別控除」という税制上の優遇措置を設けています。
「相続空き家の3,000万円特別控除」とは
正式名称は「相続した空き家(居住用財産)を売ったときの特例」です。相続や遺贈により取得した空き家(または取り壊した後の土地)を一定の要件を満たして売却した場合、譲渡所得の金額から最高3,000万円を差し引くことができる制度です。
Q. 控除額はいつでも3,000万円ですか?
A. いいえ。令和6年1月1日以後�n譲渡で、相続人が3人以上いる場合は、1人あたりの上限が2,000万円になります。相続人の数によって上限が変わる点に注意しましょう。
適用を受けるための主な要件
この特例は、誰でも使えるわけではありません。家屋・敷地・売り方のそれぞれについて、細かな要件が定められています。
家屋の要件
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 被相続人の居住 | 相続開始の直前に、被相続人が主に住んでいた一棟の建物であること |
| 建築時期 | 昭和56年5月31日以前に建築されたこと(旧耐震基準の建物が対象) |
| 登記の状態 | 区分所有建物登記がされていないこと(マンションなどは対象外) |
| 同居者の有無 | 相続開始の直前に、被相続人以外に住んでいた人がいないこと |

売却方法のパターン
- 家屋をそのまま売る、または家屋と敷地をあわせて売る
- 家屋を取り壊してから、敷地だけを売る
- 家屋または家屋と敷地を売り、譲渡した年の翌年2月15日までに耐震基準を満たすよう改修するか、取り壊す(令和6年1月1日以後の譲渡别に限ります)
また、相続から譲渡までの間、家屋や敷地を事業用・貸付用・被相続人以外の居住用に使っていないことも条件です。
老人ホームなどに入所していた場合の特例
被相続人が亡くなる前に老人ホームなどに入所していた場合でも、一定の要件を満たせば特例の対象になります。具体的には、要介護・要支援認定や障害支援区分の認定を受けていたこと、入所後も元の家屋が物品保管などに使われ続けていたことなどが条件です。該当しそうな場合は、個別の事情を税理士や税務署に確認することをおすすめします。
適用期限はいつまで?―「令和9年12月31日」と「3年ルール」の両方に注意
この特例には、2つの期限があります。
- 制度全体の期限:平成28年4月1日から令和9年12月31日までに売却すること
- 相続ごとの期限:相続開始日から3年を経過する日が属する年の12月31日までに売却すること
Q. 令和9年12月31日より前に相続が発生していれば、いつまでも使えますか?
A. いいえ。制度全体の期限である令和9年12月31日と、相続開始から3年というご自身の期限の両方を満たす必要があります。たとえば令和8年に相続が発生した場合、3年ルールの期限は令和9年12月31日となり、制度の期限と重なる点にも注意が必要です。
「まだ時間がある」と思っていても、売却の準備(相続登記、耐震診断や解体の手配、買主探しなど)には想像以上に時間がかかることが少なくありません。空き家を所有されている方は、早めに全体の見通しを立てておくことをおすすめします。なお、相続した不動産については令和6年4月からの相続登記義務化にも関係しますので、まだ登記が済んでいない場合は、まずそちらの対応も確認しておきましょう。
申告手続きと必要書類
特例の適用を受けるには、確定申告が必要です。主な必要書類は次のとおりです。
- 譲渡所得の内訳書
- 登記事項証明書(不動産番号の記載により省略できる場合があります)
- 売却した家屋の所在地の市区町村が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」
- 売買契約書の写し
- 耐震改修を条件とする場合は、耐震基準適合証明書など
「被相続人居住用家屋等確認書」は市区町村への申請が必要で、発行までに一定の時間がかかることがあります。売却を決めたら、早めに市区町村の窓口へ相談しておくと安心です。
他の相続人がいる場合・他の特例との関係での注意点
- 売却代金が1億円を超えると特例を使えません。この判定は、他の相続人による売却分や分割売却分も合算して行われます。9����c��ごでにいつB相続人ば、売却から、4か月以内に修正申告と納税が必要です。
- 取得費の特例や収用等の特別控除など、他の特例と同じ譲渡について併用することはできません。
- 同一の被相続人から取得した物件について、過去にこの特例を受けている場合は、再度の適用はできません。
- 親子や夫婦など特別の関係がある人への売却は対象外です。
まとめ―今のうちに確認したい3つのポイント
- 制度の期限は令和9年12月31日。相続開始からの3年ルールと合わせて、ご自身の期限を具体的な日付で確認する
- 家屋が昭和56年5月31日以前の建築であることなど、要件を満たしているかを早めにチェックする
- 「被相続人居住用家屋等確認書」の発行など、申告に必要な手続きには時間がかかるため、売却の計画と並行して準備を進める
相続した空き家をどう扱うかは、ご家族の状況によって最適な答えが異なります。売却するかどうかの判断や、具体的な適用可否については、税理士など専門家に早めにご相談いただくことをおすすめします。
※個別の税務上の判断が必要な場合は、税理士にご相談ください。
本記事の内容は、2026年10月8日時点で施行されている法令等に基づいて作成しています。今後の税制改正等により内容が変更される場合があります。

