生成AIの活用方針、日本企業は68.9%に上昇も中小企業は58.1%どまり―令和8年版情報通信白書から見る導入のポイント

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「生成AIは大企業だけの話で、うちのような小さな事務所には関係ない」と感じていませんか。総務省が公表した令和8年版情報通信白書によると、日本企業のうち何らかの形で生成AIの活用方針を定めている割合は68.9%まで上昇しました。ただし、その内訳を見ると企業規模によって差があり、中小企業ではまだ導入途上にあることも見えてきます。今回はこの白書のデータをもとに、税理士事務所や個人事業主が生成AIとどう向き合うとよいか考えてみます。

日本企業の生成AI活用は68.9%に上昇

総務省の情報通信白書によると、生成AIについて「積極的に活用する」または「一部の領域に限定して活用する」と回答した日本企業の割合は68.9%で、2024年度の49.7%から大きく伸びました。また、実際に一つ以上の業務で生成AIを利用していると回答した企業は86.4%にのぼり、こちらも2024年度の55.2%から大幅に増加しています。

生成AI活用方針の策定率 国際比較(日本68.9%、米国88.8%、ドイツ82.2%、中国94.1%)

もっとも、国際比較で見ると、米国88.8%、ドイツ82.2%、中国94.1%と、日本は依然として海外に比べて活用方針の策定率が低い水準にあります。伸び率自体は大きいものの、他国と比べればまだ「これから」の段階にあるといえそうです。

Q. 「活用方針を策定している」と「実際に使っている」は何が違うのですか?

A. 活用方針の策定率(68.9%)は、会社として生成AIをどう使うかの方向性を決めている割合を指します。一方、実際の業務利用率(86.4%)は、方針の有無にかかわらず、現場の従業員が何らかの形で生成AIを使ったことがあるかを示す数字です。方針が整う前に現場で使われ始めているケースも多く、この2つの数字の差は「使ってはいるが、会社としてのルールが追いついていない」状態を表しているとも読み取れます。

中小企業は58.1%どまり―企業規模による差

企業規模別に見ると、生成AI活用方針を策定している割合は大企業で74.0%であるのに対し、中小企業では58.1%にとどまります。また、全社横断から個人業務単位まで含めて「組織的に活用している」企業は全体の65.6%である一方、27.0%は「組織的な取組はない」と回答しており、これは特に中小企業で高い傾向にあると白書は指摘しています。

税理士事務所や小規模な個人事業主の場合も、この「組織的な取組はない」に近い状態―つまり、担当者が個人の判断でChatGPTなどを使っているものの、事務所としてのルールは特にない、という状態に当てはまる方が多いのではないでしょうか。

実際にどんな業務で使われているか

白書によると、日本企業が生成AIの効果を最も実感している業務は「議事録・メール作成補助」で、約7割の企業が活用しています。次いで「営業・販売」が約6割、「社内ヘルプデスク」が約5割と続きます。効果として認識されている項目では、「作業時間短縮による業務効率化」が61.6%と最も多く、「製品・サービスの質の向上」(32.2%)、「人員不足の解消」(26.8%)が続きました。

Q. 税理士事務所ではどんな業務から生成AIを試すのがよいですか?

A. 白書のデータを踏まえると、まずは「議事録・メール作成補助」のような、判断の正確性よりも文章作成の手間を減らすことが目的の業務から試すのが無理のない進め方です。顧問先とのやり取りメールの下書きや、打ち合わせメモの整理など、最終チェックを人が行う前提の業務であれば、生成AIの誤りによるリスクを抑えながら効果を実感しやすいでしょう。税務判断そのものをAIに任せることは避け、あくまで下書き・たたき台作成の補助として位置づけることが大切です。

導入における懸念点:セキュリティと精度

生成AIの導入において企業が懸念する点としては、「社内情報漏洩などのセキュリティリスク」が46.4%で最多となり、「出力結果の精度に問題がある」(35.3%)、「著作権侵害の可能性」(31.7%)が続きます。税理士事務所であれば、顧問先の財務情報や個人情報を扱う機会が多いため、このセキュリティリスクへの意識は特に重要です。

生成AI導入で懸念されるリスク(セキュリティリスク46.4%、出力結果の精度35.3%、著作権侵害の可能性31.7%)

白書では、こうしたリスクへの対策として「全社的な指針やガイドラインを整備」している企業が41.1%にとどまることも紹介されています。顧問先の情報を入力する際に、どのAIサービスであれば安全に使えるか(法人向けプランで入力データが学習に使われない設定になっているかなど)を事務所内であらかじめ確認しておくことをおすすめします。

中小企業のAI・IT活用に関する動向は、以下の記事もあわせてご覧ください。

まとめ

令和8年版情報通信白書によると、生成AIの活用方針を定めている日本企業は68.9%まで上昇しましたが、中小企業では58.1%にとどまり、大企業との差も見られます。効果を実感しやすいのは議事録・メール作成補助といった文章作成の補助業務で、一方でセキュリティリスクや出力精度への懸念も根強く残っています。税理士事務所や個人事業主が生成AIを取り入れる際は、顧問先の情報を扱う業務から慎重に、下書き作成など人のチェックを前提とした業務から始めるのが安心です。

本記事の内容は、2026年9月28日時点で公表されている情報に基づいて作成しています。今後の調査結果の更新等により内容が変更される場合があります。個別の税務相談については、税理士にご相談ください。

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