フリーランス新法、勧告10件・指導1,542件―令和7年度の運用状況から見る注意点と今できること

個人事業・副業

「フリーランス新法」という言葉を耳にしたことはあっても、実際にどれくらいの違反が起きているのか、具体的な数字を見たことがある方は少ないのではないでしょうか。2026年6月10日、公正取引委員会から「フリーランス・事業者間取引適正化等法」の令和7年度の運用状況が公表されました。今回はこの結果から見える傾向と、フリーランス・個人事業主が自分の身を守るために今できることを、税理士の視点で解説します。

フリーランス新法とは(おさらい)

正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」で、フリーランス(特定受託事業者)に業務を委託する事業者に対して、取引条件の書面等による明示や、報酬の発注から60日以内での支払いなどを義務付ける法律です。違反があった場合には、公正取引委員会や中小企業庁が指導・勧告を行う仕組みになっています。

令和7年度の運用状況:勧告10件、指導1,542件

公正取引委員会の発表によると、令和7年度における勧告件数は10件、指導件数は1,542件で、合計の措置件数は1,552件でした。1件の事件で複数の違反類型が認定されることもあるため、違反行為の類型別に集計すると、全体で2,727件という数字になります。

フリーランス新法 違反行為の類型別内訳(期日における報酬支払義務違反41.6%、取引条件の明示義務違反41.3%、買いたたき9.2%)

違反行為の類型で最も多かったのは「期日における報酬支払義務違反」(1,135件、41.6%)で、僅差で「取引条件の明示義務違反」(1,126件、41.3%)が続きます。この2つで全体の8割以上を占めており、「支払いが遅い」「契約条件があいまいなまま仕事が始まる」という、フリーランスにとって身近なトラブルが実際に多発していることが裏付けられた形です。「買いたたき」も250件(9.2%)と一定数見られます。

Q. 「取引条件の明示義務」とは、具体的に何を明示する必要がありますか?

A. 業務委託をする事業者は、給付の内容・報酬額・支払期日など、あらかじめ定められた事項を書面または電子メール等の方法で明示することが義務付けられています。「口頭で仕事を頼まれて、金額や納期があいまいなまま作業を始めてしまった」というケースは、この明示義務違反にあたる可能性があります。仕事を受ける際は、金額・納期・支払期日が書面やメールで残る形になっているか、必ず確認する習慣をつけましょう。

業種別では情報通信業が最多

措置件数を業種別に見ると、「情報通信業」が575件(37.0%)で最も多く、「学術研究、専門・技術サービス業」が326件(21.0%)、「運輸業、郵便業」が135件(8.7%)と続きます。エンジニアやWebデザイナー、コンサルタントなど、フリーランスとして働く人が多い業種で違反が目立っていることがわかります。

フリーランス新法 措置件数の業種別内訳(情報通信業37.0%、学術研究・専門技術サービス業21.0%、運輸業・郵便業8.7%)

実際に、運輸業では大手事業者が取引条件の明示義務違反等で勧告を受けた事例も公表されています。以前の記事でも取り上げた日本郵便の事例のように、大手企業であっても勧告の対象になり得ることは、フリーランス側にとって「取引先の規模にかかわらず、権利は法律で守られている」という安心材料にもなります。

Q. 取引先から違反を疑われる対応をされた場合、どこに相談すればよいですか?

A. 公正取引委員会は令和7年度、説明会を40回開催し、相談対応を4,351件行ったと公表しています。フリーランス・トラブル110番など、行政の無料相談窓口が用意されているため、一人で抱え込まず、まずは記録(やり取りの履歴、契約に関する書面など)を残したうえで相談することをおすすめします。相談内容によっては、確定申告における取引先とのやり取りの整理にもつながるため、顧問税理士がいる場合はあわせて共有しておくとよいでしょう。

フリーランスが今できること

  1. 発注内容を書面・メールで残す習慣をつける:口頭やチャットの一言だけで仕事を引き受けず、報酬額・納期・支払期日が明記された書面やメールを必ず取り交わしましょう。
  2. 支払期日を自分でも把握しておく:報酬は原則として発注から60日以内に支払われる必要があります。入金予定日を自分の帳簿やスケジュールに記録し、遅延があった場合にすぐ気づけるようにしておきましょう。
  3. 記帳を習慣化し、証跡を残しておく:請求書や入金記録をこまめに会計ソフトに反映しておくと、万一のトラブルの際に取引の実態を示す資料としても役立ちます。確定申告の準備にもつながる、一石二鳥の習慣です。

フリーランス新法の具体的な違反事例については、以下の記事もあわせてご覧ください。

まとめ

令和7年度のフリーランス新法の運用状況では、勧告10件・指導1,542件、合計1,552件の措置が行われました。違反行為としては報酬の支払遅延と取引条件の明示不足が突出して多く、情報通信業をはじめとした専門性の高い業種で目立っています。フリーランスとして働く方は、取引条件を書面で残す習慣や支払期日の管理を徹底することで、トラブルを未然に防ぎやすくなります。おかしいと感じたら一人で抱え込まず、公正取引委員会などの相談窓口を活用しましょう。

本記事の内容は、2026年9月25日時点で公表されている情報に基づいて作成しています。今後の運用状況の更新等により内容が変更される場合があります。個別の取引トラブルや税務上の取り扱いについては、公正取引委員会の相談窓口や税理士等の専門家にご相談ください。

出典

タイトルとURLをコピーしました