2026年10月2日、国税庁は個人事業主向けの無料サポート制度である「記帳指導」について、会計ソフトを使った指導方式に新しいコース「コンパクト型」を追加したことを公表しました。これから青色申告を始める方や、消費税の課税事業者になる方にとって、記帳の基本を無料で学べる貴重な機会です。今回は、この記帳指導制度の全体像と、新設されたコンパクト型のポジション、申込みの流れを税理士の視点で解説します。
「記帳指導」とは何か
記帳指導は、各国税局が委託した事業者(会計ソフトベンダーや税理士会など)が、個人事業主に対して記帳の仕方から一般的な決算処理、確定申告書等の作成方法までを一貫して指導する制度です。税務署の窓口だけでは手が回らない「基礎からの記帳学習」を、専門の指導員がマンツーマンまたは会場形式でサポートしてくれる点が特徴です。
Q. 記帳指導は誰でも申し込めますか?
A. 主な対象は「新たに青色申告を行う方」「正規の簿記の原則に従った記帳を新たに行う方」「新たに消費税の課税事業者となる方」です。開業して間もない個人事業主や、白色申告から青色申告(65万円控除)への切り替えを検討している方が中心的な対象になります。
2つの指導方式と、新設された「コンパクト型」
記帳指導には、従来から「会計ソフト方式」と「個別指導方式」の2つの方式が用意されています。今回新たに案内されたのは、会計ソフト方式の中に設けられた簡易版の「コンパクト型」です。
- 会計ソフト方式:指導会場に用意されたパソコンと会計ソフトを使って、記帳のやり方を学ぶ方式です。自分で会計ソフトを用意する必要がなく、使用するソフトは委託先の事業者によって異なります。
- 会計ソフト方式(コンパクト型):従来の会計ソフト方式をもとに、より短時間・少人数向けに編成された簡易コースです。基本的な入力操作に絞って学べるため、「まずは最低限の記帳の流れだけ押さえたい」という方に向いています。
- 個別指導方式:自宅や事業所を指導員が訪問し、実際の帳簿に基づいて指導を行います。複数回(4〜5回程度)にわたり、記帳からe-Tax申告までを継続的にサポートしてもらえる点が特徴です。
どの方式が合っているかは、事業の規模や「どこまで自分で対応できるか」によって変わってきます。取引件数が少なく、まずは操作に慣れたいだけの方はコンパクト型、継続的に手厚いサポートを受けたい方は個別指導方式が候補になるでしょう。

申込みから指導を受けるまでの流れ
記帳指導の申込みは、最寄りの税務署(所得税担当)への電話相談が基本です。受付時間は平日午前8時30分から午後5時まで(土日祝を除く)となっています。希望者が多い場合は対応できないことがあるため、青色申告を始めたいと考えている方は早めに相談しておくと安心です。

Q. 記帳指導を受けるメリットは何ですか?
A. 最大のメリットは、専門的な指導を無料で受けられることです。会計ソフトの基本的な使い方だけでなく、日々の入力から決算、確定申告書の作成までの一連の流れを体系立てて学べるため、自己流で記帳を始めて後から誤りに気づくリスクを減らせます。特に青色申告特別控除(65万円・55万円)を受けるには、正規の簿記の原則に従った記帳と、期限内の電子申告等の要件を満たす必要があるため、早い段階で正しい記帳方法を身につけておく意味は大きいといえます。
税理士への相談と記帳指導の使い分け
記帳指導はあくまで「記帳の仕方」を学ぶための制度であり、個々の事業における税務上の判断(経費の範囲、特例の適用可否、将来の法人化のタイミングなど)まで踏み込んで相談できるものではありません。日々の記帳は会計ソフト方式やコンパクト型で基礎を身につけつつ、事業が大きくなってきた段階や、判断に迷う取引が増えてきた段階では、税理士に相談することも検討するとよいでしょう。記帳の型を早めに作っておくことは、将来的に税理士へ依頼する際にも、やり取りをスムーズにする土台になります。
まとめ
2026年10月2日に国税庁が公表した「会計ソフト方式(コンパクト型)」は、これから青色申告を始める個人事業主にとって、記帳の第一歩を無料でサポートしてもらえる選択肢の一つです。自分の事業規模や希望するサポートの手厚さに応じて、会計ソフト方式・コンパクト型・個別指導方式のいずれが合うかを検討し、早めに税務署へ相談してみることをおすすめします。
本記事の内容は、2026年10月2日時点で施行されている法令等に基づいて作成しています。今後の税制改正等により内容が変更される場合があります。個別の税務相談については、税理士または最寄りの税務署にご確認ください。

